イギリスで定番の食べ物というとこのフィッシュ&チップスを思い浮かべる人も多いと思います。衣をつけてカラッと揚げた白身魚と分厚いフライドポテトというハイカロリーなこの食べ物。イギリス人のソウルフードと言っても過言ではないフィッシュ&チップスの歴史から最近のニュースまでご紹介します。
フィッシュアンドチップスって要するに何?美味しいの?
本場のフィッシュアンドチップスはどんな風?
これまでに日本イギリス問わずフィッシュ&チップスを30食は食べている私がその魅力をご紹介します。
フィッシュは白身魚で日本のタラに似たCod(コッド)という魚か、少し野性味があって魚臭いHaddock(ハドック)が主に使われ、お店ではこのどちらかを選んで注文します。店によっては魚の種類によって値段が若干違います。この写真のように臭み消しにレモンが付いてくることもあります。
フィッシュ&チップスをオーダーすると、だいたいソースが①タルタル②グレービー③カレー④マッシュピーのどれかから選べます。ソースの種類によって追加料金があることも。
揚げた魚とイモをおしゃれさのかけらもなくドーンと皿に盛り付けたのがフィッシュ&チップスです。(ワーキングクラスのための食事として食べられていたので、ボリューム命なのでしょう)
30センチ以上あるディナープレートにこんもりと盛られたチップスとはみ出さんばかりの巨大なフィッシュ。ちなみに、これは大ではなく普通サイズです。
私の婚約者によると、日本で初めてフィッシュ&チップスをオーダーした時の衝撃が忘れられないそうです。(某有名チェーン店)日本ではなかなか本場サイズのフィッシュ&チップスにお目にかかるのは難しいですが、六本木にあるマリンというレストランはイギリスサイズの一皿がいただける貴重な一店です。
フィッシュ&チップスはどうやって作っている?お味は?
基本的にイギリスの料理は薄味で、フィッシュ&チップスも塩胡椒などされていないのでお好みで味付けします。レストランには塩胡椒とケチャップ、モルト・ビネガーがあるのが普通です。フィッシュ&チップスにビネガーをこれでもかと振りかけて食べるのがイギリス流です。
フィッシュの黄金色の衣にはビールと小麦粉が使われているため、揚げたてはサックサクです。ここに塩胡椒をしてビネガーをかけたり、ソースをつけたりして、熱々のうちにいただきます。
チップス(注:チップス=日本でいうところのフライドポテト)は細くてお上品なフレンチフライなど目じゃないほど、じゃがいもを分厚くスライスして二度素揚げするためシナシナせず、こんがりとした色とカリッとした食感が楽しめます。
イギリスに旅行していた時やイギリスに住み始めた当初はチップスが多すぎて食べきれませんでしたが、イギリスで暮らすとほぼ毎食イモを食べるため耐性ができたのか、いつしかフィッシュ&チップスをぺろりと平らげられるようになりました。
レストランはどんな感じ?地元の人はどうやって食べている?
フィッシュ&チップス店はファストフードの一種で店が前に共通点があり、ぱっと見でそれとわかります。大抵がガラス張りでデカデカと「Fish and Chips」などと書いてあり、カジュアルで入りやすい雰囲気が漂っています。海沿いの田舎のレストランは小さい店が多く店内のカウンターやテーブルから外の風景を見ながら食べたり、店の外のテーブルで食べるのも楽しいものです。イギリスも日本と同じく、持ち帰り(Take away:テイクアウェイ)がイートインより安いため、地元の人はたいてい家に持ち帰っているようです。
寒くない時期で雨が降っていなければ、テイクアウェイしたフィッシュ&チップスを砂浜や公園で食べるのもなかなかオツなものです。
フィッシュアンドチップスの発祥は?いつから食べられるようになった?
フィッシュとチップスは最初は一緒じゃなかった!?
フィッシュ&チップスは黄金のコンビネーションとしてイギリス人に愛されていますが、元々は一緒に食べられていたわけではありません。
イギリスのウェブサイトを見たところ、フィッシュは16世紀にスペイン、ポルトガルの移民によって伝えられたという説がありました。
また一説には17世紀にユダヤ人の移民が道で魚のフライを売っており、1781年にはトーマス・ジェファーソンによる『ユダヤ人流の魚の保存方法』のようなイギリスの料理本が出版されました。
1837年に出版された著名なイギリス人作家チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツイスト』は舞台がロンドンですが、「fried fish wearhouses(魚のフライ倉庫)」という記述が見られます。またこの当時はチップスではなく、フィッシュにベークドポテトかパンを供していたようです。
フィッシュの伝来はわかりましたが、チップスはどこから来たのでしょうか。
じゃがいも料理のイメージが強いイギリスではすが、じゃがいもが南米からイギリスに伝わったのは16世紀になってからでした。チップスの発祥ははっきりしないようで、ベルギーからもたらされたと言われています。1817年にウィリアム・キッチナーという著者による料理本にはこのチップスを含む現代に通じる料理方法が掲載されています。1860年にはイギリス内では第2の都市とも言われるマンチェスターのオールダムというところに初のチップスショップ(フライドポテト店)がオープンしたそうです。
フィッシュもチップスもイギリス人ではなく、移民によって発案されたと言うのは意外ですね。
初のフィッシュアンドチップス店のオープンはいつどこに?
歴史を紐解くと、フィッシュとチップスは初めから一緒に供されていたわけではなかったことがわかりました。ではいつから一緒に食べられるようになったのでしょう。
初のフィッシュ&チップス店の誕生は1860年に、ジョセフ・マリンという若いユダヤ人移民によると言われています。この店は大成功を収め、1970年代まで継続したそうです。
またロンドンから500km西北に離れたランカシャーという地域でジョン・リーズという地元の起業家が1863年に初めてフィッシュ&チップスを販売したという一説もあります。
日本でも「○○の発祥は当店」などといくつかの場所で言われることがあるようにフィッシュ&チップスの起源も諸説あるようですね。ちなみにFish and chips = chippy(チッピー)とも呼ばれています。
なぜイギリスでフィッシュアンドチップスは大人気なの?
フィッシュアンドチップスの人気の秘訣は?
19世紀にはフィッシュ&チップス店が誕生し、人々の間で広く食べられるようになりました。特に18世紀〜19世紀の産業革命で魚の運送が容易になりコストが下がり、フィッシュ&チップスも広い範囲で販売されるようになりました。安価なだけでなく、シンプルですぐにできるフィッシュ&チップスは労働者の胃を満たすのにもぴったりの食事でした。第二次世界大戦中も配給食として市民に提供されていました。労働者階級から始まり、中流階級の人にまで広まっていきました。
1920年代の終わりにはイギリス全土に35,000ものフィッシュ&チップス店が存在し、2021年の調査では10,500店で3,600万食ものフィッシュ&チップスが毎年供されているそうです。
イギリスでは金曜日は「フィッシュ&チップスを食べる日」されています。これはローマ・カトリックの影響が強く、金曜日は肉を食べない習慣があったためだと言われています。もちろん今日では曜日を問わず食べられていますが、とりわけ金曜日の夜はよく売れています。
2015年から6月1週目の金曜日はNational Fish and Chips Day(国民的フィッシュ&チップスの日)として定められました。
歴史に密接に結びついていることや、イギリスではシンプルな食べ物が好まれること、日本と同じ島国で魚が取れることなどが人気の秘密ではないでしょうか。
フィッシュ&チップスにまつわる最近のニュース
イギリスでこれだけ人気だと、ニュースで取り上げられることも多いものです。ここでは3つご紹介します。
フィッシュ&チップスにつきもののモルト・ビネガーの超大手会社、サーソンズからビッグニュース。2022年8月中の金曜日に9.5ポンドまでのフィッシュ&チップス100皿をなんとタダに!
生活費が尋常じゃないほど上昇したイギリスでは外食する人も減っているので店の客数を増やすためだそうです。
ナニートンという街のフィッシュ&チップス店が暑さのため安全面を懸念し、閉店を余儀なくされています。
冷房がない厨房や店内は40度以上もの暑さになり、このウォーウィックシャー、ナニートンの5つ星フィッシュ&チップスバーのスチュアートクーパーさんは、店で働くのはとても不快なため熱波が去るまで店を閉めるという決断をしました。
ジャガイモ農家によると熱波によりチップスの価格が高騰するそうです。熱波はジャガイモの収穫率や質に影響しました。最近の気温上昇は作物に大打撃を与え、ジャガイモの生育にも警鐘が鳴らされているような状態だそうです。
コメント